前編はこちら↓
ラダックのパンゴンツォの行き方はこちら↓
後部座席に乗り込んできたチャラい2人の男…
暗い、電気もないような田舎道をタクシーは走りました。夜の祭りが20時頃くらいからだったので19時半頃だったように思います。
運転手のおとなしそうな青年がなにやら誰かに楽しそうに携帯で電話をし始めました。おいおい仕事しろよ、なんてことは思わずに助手席に乗っていた私。
すると、しばらくして、車が止まり男2人組が後ろに乗り込もうとしてきました。
「何でやねん?!(という気持ちを込めてWhy?!)」
と連呼しましたが、ドライバーは
「マイフレンド、マイフレンド」の連呼。
インド人の言うマイフレンドほど怪しい言葉はありません。
「私には関係ないし!私は客やし!乗せんといてよ!」と怒鳴りましたが、
「フェスティバル!マイフレンド!」の一点張り。体の大きい、ノリノリのチャラい男2人が無理やり後部座席に乗り込んでタクシーは発車。
「そいつらが降りないなら私が降りる」と怒っても、
「こんな何もないところで降りたら危ないから」と言って降ろしてもくれずくらい田舎道を走り続けました。
後ろの2人は笑顔で「ジュレー!ハロー!」とラダック語の挨拶をしてきました。私はニコリともせずにらみつけ無視を決め込みました。
終わった…。いや終わらない。ヤるならその前に殺ってやる。
にらみつけたものの、私の頭は、恐怖で一杯。あのインドでの事件の報道が浮かび、「私はここで暴行され捨てられるかも知れない」という最悪の事態ばかりが頭を巡ります。
「終わった…」と後悔ばかりでしたが、メラメラと私の奥底から魂が燃えてきました。
アメリカのゾンビドラマ(もはやゾンビドラマではなく人間ドラマ)『ウォーキングデッド』を6年くらい前に見だしてからは、旅先で人気のない所を歩くときは、必ずウォーカー(ゾンビ)にもしも今襲われたらどう倒すかを考えている私。今持っているものでどう倒せるか。どうやって逃げるかをイメトレしてゾンビ世界になっても大丈夫なように備えています。
そのおかげもあって、強いハートで、
「まだ終わってない。ヤるなら殺るしかない!」という決心をしたのでした。
ハリウッド映画をお手本に
とにかくハリウッド映画とアメリカドラマを見過ぎな私は、まず、ダッシュボードに白い粉や拳銃が隠されてないかをさりげなく確認。
「うわっ…ある」と思って凍りついたんですがよく見れば拳銃ではなく黒い懐中電灯。運転手のズボンのポケットにも拳銃が隠されている様子はなく、後ろの男たちもおそらく大丈夫だろうと判断。ナイフの可能性は捨てきれないからあくまで慎重に対処せねばと気を引き締めます。
そっとシートベルトを外し、ドアのロックも開けておき、窓も全開にしました。懐中電灯を持っておこうとしたところで気づかれて、「何してる?」と聞かれました。現地で暗いと困るから貸して欲しいと伝え借りることにしました。「いざとなれば、これで殴り殺すしかないな」という決意はバレていないようで安心。私だけが緊迫した状況下で後部座席の男が「どこからきたの?」とニヤケながら聞いてきました。「ジャパン」とだけ答えサムライ魂を抱いてバックミラーでにらみつけます。ラダック語で何やら3人で楽しそうに話してから「ホテルはどこに泊まってるのか?」と聞いてきました。その時、後ろの2人が身を乗り出して前のシートの背もたれを掴んできたので、
「ドントタッチ!ノーーー!!」
と叱りつけました。びっくりした2人は何かなだめようと私に言ってきましたが、もう私は聞いちゃいません。とにかく、ノー!と言い、距離を取るように、とにかく私に近づくなと厳重に注意。ドライバーがびっくりして車を止めようとしたので、
「止めるな!ただ、行け!祭り会場にただ連れて行けばいいから、黙って行け!JUST GO!!!」と、今思えば、どちらが犯罪者か分からないような振る舞いで、私は凄んでいました。手には懐中電灯。今にも殴りつけんばかりに見せつけながら。男3人が必死に私に「Calm down」「落ち着いて落ち着いて」的なことを言っていました。運転手が、車のスピードを落としたので、私は助手席の扉を開け降りてやろうかと思ったら、後ろからそれを止めようと手が出てきたので、「ノー!!」とはたき、本当に殴ってやろうと思った時、暗い道を抜け、少し広めの明るい道に出ました。
「チャンス!」これで逃げれる!と思った時、車の行列を発見。
「助かった」
そう思った直後に、祭り会場に向かうタクシーの渋滞だということに気づきました。
祭りは誰もが楽しむ場所
なんと!
ただ、祭り会場に裏道で連れてきてくれただけでした。本当にJUST GOでした。
チャラい後ろの2人がとても優しい好青年に見えてきました。
少し冷静になって、英語が頭に入ってくるようになり、
「怖い思いをさせるつもりはなかった。」と言っているのが分かりました。
よくよく聞くと、
「友達とお祭りに行くのを楽しみにしてたけど、私に頼まれて運転手の仕事が入ったから、ついでに、せめて友達だけでも連れて行ってあげようと思って2人を乗せたんだよ」とのこと。後ろの2人も「祭りは僕らも楽しみだったから」とはにかんでいます。
めっちゃ素朴な青年たちやないか!
私は、
「インドの事件のこともあってナーバスになり過ぎてた、めんご!」と謝りつつ、女1人の客を乗せてる時に男を乗せたら友達だとしてもダメだと厳重注意。
3人組も、
「それは怖かったよね?インドが怖がらせてごめん!」みたいに謝ってくれました。
祭り会場に着いて、後ろの2人は、
「僕たちは遅くまで楽しむから。帰りは何とかするから、帰りは乗らないから安心してね。」と言って消えて行きました。
ドライバーは、
「あなたが帰りたくなったらいつでも言ってくれたら帰るし、宿の入り口まで送るよ。楽しんでおいで。何か怖いことがあったら電話してくれたらすぐ行くから」と携帯の番号のメモまでくれて、会場まで送り出してくれました。自分はタクシーの中でお留守番。
何ていい奴らや!ほんまゴメン…。
その後、祭り会場で2人組が、楽しそうに民謡を聞いていたのを見かけて微笑ましかったです。そして私はあの2人を殴り殺そうとしたのかと思うと、申し訳ない気持ちで一杯になりました。
教訓
・恐怖心は人を狂わせる
私は警戒心が強いのはいいんですが、冷静なのに妄想が止まらない癖があります。襲われることよりも、自分の身を守るために罪を犯さないか心配です。ウォーキングデッドに影響されるのもほどほどにしなければいけません。
しかし、(自分で作り出した)恐怖の中でも、冷静に逃げ方、身の守り方を考えられていたのでイメトレもある意味役立っていると言えるでしょう。
あと、英語のリスニング。恐怖心を抱いてるときに聞く外国語って、意味不明な言葉に聞こえてきます。人の話をよく聞くことはコミュニケーションの基本。どんなときでも、聞けて理解できるようになりたいです。
・やはり夜の女1人はできるだけ避けるべき
1人だからこそ警戒心を持ち続けられるという面もあります。誰かといると自然と安心しちゃうことが危険に繋がる可能性も。それでも1人だと不安感から思いもよらぬことを起こすかもしれないのでできるだけ女1人の行動は夜は避けた方がいいでしょう。
・人を見る目を養う
私が1人で妄想の世界で彼らを悪人に仕立てあげてしまったけど、そもそも運転手は(その友達も)、一貫していい奴でした。最初に私が信頼できると思って選んだ人だったので私の判断に狂いはなかった。むしろ狂ったのは私。
自分の感覚を信じていいと思いましたが、思い込みすぎるのも良くないので、日々、人を見る目を養うようにしておこうと思いました。
何やかんやでラダック最高。
大好きな場所です。人も穏やかで景色もいいし飯もうまい。モモ、トゥクパ三昧。
結局のところ、旅人の皆さんに全力でオススメしたい場所です。いい人達に恵まれました。(向こうはクレイジーな日本人に出会ったと思ってるかもですが)
以上、旅先で本気でヒヤっとした事件簿シリーズ最終回でした。また今後の旅でヒヤっとすることがあれば追加報告していこうと思います。(ないのが一番ですが)
皆さんも、旅先で本気でヒヤっとすることがないように、気をつけて旅を楽しめますように。私からの参考にならない教訓をお伝えしました。